「値決めは経営である」この有名な言葉は、京セラの創業者である稲盛和夫氏によるものです。『稲盛和夫の実学』(日本経済新聞社)の中でこう記されています。
「値決めは単に売るため、注文を取るためという営業だけの問題ではなく、経営の死命を決する問題である。売り手にも買い手にも満足を与える値でなければならず、最終的には経営者が判断すべき、大変重要な仕事である」経営の死命を制するのは値決めです。値決めにあたっては、利幅を少なくして大量に売るのか、それとも少量であっても利幅を多く取るのか、その価格設定は無段階でいくらでもあると言えます。
どれほどの利幅を取ったときに、どれだけの量が売れるのか、またどれだけの利益が出るのかということを予測するのは非常に難しいことですが、自分の製品の価値を正確に認識した上で、量と利幅との積が極大値になる一点を求めることです。その点はまた、お客様にとっても京セラにとっても、共にハッピーである値でなければなりません。
この一点を求めて値決めは熟慮を重ねて行われなければならないのです。
本年度の3月決算をみていると、昨年から続く値上げラッシュ(原料、燃料、人件費、円安等)に価格を転嫁できずに、売上は増加したが粗利は減少し、最終的に赤字になったという企業をよく見ます。今後はコストの上昇を踏まえて、早い段階で、適正に値決めをしていく必要があると思います。